「店舗コンセプト」が重要な理由と設定方法
店舗コンセプトが重要な理由 1:店舗経営の根幹
「店舗コンセプト」とは、経営者が持つ「どういう店にしたいのか」という考えのこと。店舗を経営していく上での根幹であり、柱となるものです。そのため、店舗コンセプトがしっかりしていればしているほど、その後に付随する具体的な事業計画や方針が明確になっていきます。
例えば、店舗コンセプトが「ハワイ」という飲食店をスタートさせることを考えてみましょう。まずはハワイ料理を提供することはもちろん、内装や店員の制服もハワイにふさわしいものにしようというふうに考えがまとまり始めます。ただし、実際には「ハワイ」の料理店という発想だけでは、店舗コンセプトとしてはまだまだ不十分。事業を継続的に運営し、成功に導いていくための柱としては頼りない状態です。
具体的には、「どこよりも美味しいハワイ料理」というような、漠然としたキャッチコピーのレベルにとどまることなく、「近くの競合よりも安くて、本格的な輸入食材を使用した本場ハワイの味を、ファミリー層に食べさせたい」というふうに、できるだけ詳細かつ明確に考えることが大切です。
このように、店舗コンセプトは経営の根幹・柱になりますが、同時に起業の出発点でもあります。事業はいつも順調であるわけではありません。むしろやりたい事に対して資金が足りなかったり、当初の客足が想定よりも伸びなかったり、欲しい食材が仕入れられなかったり、あるいは後発で競合店が出店してきたりなど、乗り越えなければならない問題が次々に現れます。その時に都度立ち返り、確認するのは店舗コンセプトです。それにより、さまざまなマイナス要因にも揺るがずに、本来の店づくりに沿った改善策を講ずることができるのです。
店舗コンセプトが重要な理由 2:事業計画に必須
起業するときに、自己資金だけでは開業資金や運転資金が不足してしまうというケースは珍しくありません。こういった場合には金融機関から融資を受けることになります。そのときに必要になるのが「事業計画書」です。事業計画書は、事業主が起こす事業をどのように展開していきたいのかを具体的に細かく表したものです。金融機関は、提示された事業計画書によって、事業の妥当性、継続性、将来性を見極めて融資可否を判断します。店舗コンセプトなくして事業計画は策定できません。従って、必要な資金融資を得て不安のないスタートを切るためにも店舗コンセプトはとても重要です。
事業計画書には、事業の目的・内容、経営方針、販売戦略・売上予測などを記入します。もし店舗コンセプトが不明瞭でうまく記入できなければ、経営の見通しも不明瞭と見られてしまいます。そうなると、融資額の返済見通しに疑問符が付き、融資判断にはかなりマイナスになります。融資する側にはリスクを負ってまでお金を貸す理由はありませんから、これは当然のことです。融資額の減額や、融資を受けられない可能性が高くなってしまいます。
最初の思い付きの段階では夢が膨らみ、そればかりを追い求めていたかもしれません。しかし、それを事業として確立して、さらに自分以外の協力者に伝えて賛同を得るためには、客観的に判断できる資料が必要なわけです。それを作り上げるもとになるのは、やはり店舗コンセプトということになります。
店舗コンセプトを設定するためには
店舗コンセプトを考え、設定していくにはいくつかの方法があり、設定に当たっては複数の要素が絡み合うため、目的や問題点をさまざまな視点から考える必要があります。ここでは、店舗コンセプトを設定するための代表的な考え方を三つ紹介していきます。
【「7W2H」で考える】
「7W2H」とは、英単語(疑問詞)の頭文字をとったもので、ビジネスにおいてよく知られている考え方です。
〈Why〉なぜ/何のためにその店を開業するのか?
〈When〉いつ/いつまでに開業するのか?
〈Where〉どこ/どのエリア・立地に出店するのか?
〈Who〉だれが/誰が誰と開業・店舗運営するのか?(資金協力・従業員体制)
〈Whom〉だれに/どのような顧客に対しサービスを提供するのか?
〈What〉なにを/どのような商品・サービスを提供するのか?
〈Which〉どれを・どれから/何を優先するのか?
〈How〉どのように/どのように経営あるいは店舗運営していくのか?
〈How much〉いくら/どれくらいの費用と時間をかけるのか?
この7W2Hは、目的と手段の整理や、独自の特徴を打ち出すとき、計画を進める順番を判断するときなどに非常に役立ちます。例えば、先ほどのように「ハワイ」をコンセプトにして飲食店を開業するとすれば、「なぜハワイのテイストを取り入れたいのか(Why)」「何をメニューとして提供したいのか(What)」「どのような店舗づくりをしてどのように集客するのか(How)」というように、アイデアを7W2Hに当てはめて考えます。これにより、優先順位や実現性などもある程度見えてくるので、漠然とした夢のようなものが店舗コンセプトとしてブラッシュアップされていきます。
【顧客層から考える】
店舗には、老若男女問わず多くのお客様に来てもらうことが理想ですが、ターゲットとする顧客層が広すぎると「誰に何を買ってほしいのか」がわからない、ぼんやりした店になる可能性が高くなります。そこで、主に商品やサービスを提供したい顧客層(Whom)を先に明確にすると、コンセプトを固めやすくなります。例えば、先ほどのハワイに加えてターゲット層を大学生や20代の男女と決めたなら、「大盛り・メガ盛りで写真にも映える料理」「夜遅くまで営業」「パーティー営業やカクテルの充実」「入店しやすさを意識した設営」「SNSを上手に利用した宣伝」というように、関連事項が次々に派生して、経営の形が具体的にイメージできるようなコンセプトにつながります。
【価格帯から考える】
店舗で扱う商品・サービスの価格帯(How much)をもとに、コンセプトを組み立てていくこともできます。仮に仕入れコストが大きい商品・メニューを扱うならば、当然販売価格も高くなるはずですから、スーパーマーケットのように薄利多売にすることはできないでしょう。
そうなると、顧客の年齢層はある程度高めだと想定されるので、店構えは高級感のあるものがふさわしいと考えられます。しかし、近くに雑多なディスカウントストアがあるような落ち着きのない場所では来店してほしい顧客層がそもそも少ない可能性が高いので、立地の優先度を高めて候補地を検討する、というように論理立てたコンセプトが形づくられていきます。
逆に、競合よりも「安くておいしい料理を提供する」などのコンセプトが効果的な場合もあります。ただ、ここに記しているのはあくまでも一例、ヒントですから、何をコンセプトの核にするとしても、それに付随する他の必要な要素を合わせて組み立てていくことになります。
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